ダルニー奨学金 第一期生の今
民際センター事務局の壁に飾られている1枚のセピア色の写真から、緊張した10人の顔と20の真剣な瞳がこちらを見つめています。1987年の団体設立後、民際センターが初めて奨学金を提供した、タイのダルニー奨学生41名のうちの10名の集合写真です。学校ごとか地域ごとに撮ったのでしょうか。残念ながら、41人揃った写真は見あたりません。写真の子どもたちは30年以上の歳月を経て、現在どのような人生を送っているのでしょうか? この記念すべきダルニー奨学金第一期生の1人の消息を、民際センター・タイ事業所が追ってくれました。
写真前列左から2番目に座っている女の子をご覧ください。名前はトゥウンジャイ・アプカラットさんといい、現在49歳。結婚して姓が変わりましたが、ウドンタニ県にある母校の中学校で英語教員として働いています。そしてなんと、学校ではダルニー奨学金の担当官も務めており、自分と同じように経済的な貧しさから学校に通えない子どもたちをサポートしているといいます。「奨学金があったので出稼ぎに行かずにすみました。毎朝5 時に起床し、自転車で20 キロの道のりを一日も休まず登校、一所懸命に勉学に励み、生徒会長にもなり、高校、大学に進学し、念願の教師になりました」と当時を振り返ります。
こうしてトゥウンジャイさんたち第一期生から始まった「ダルニー奨学金」は、設立以来、延べ42万人の子どもたちの就学を支援してきました。彼女のように奨学金の支援を足掛かりに、貧困の連鎖をどうにか断ち切り、将来を立派に切り拓いていく生徒はたくさんいます。
そして民際センターでは、メコン5ヵ国での30年を超える奨学金提供経験とノウハウを生かし、先月から高校就学をサポートする「HOPE奨学金」も開始しました。たとえ貧しい家庭に生まれても、中学教育、高校教育を受けることで、その後の人生を大きく変えることができます。教育支援こそが未来に希望を与える国際貢献であると考え、これからも皆様とともに活動を続けてまいります。