ラオス リサイクルプロジェクト 様々な成功事例
前回の配信に引き続き、ラオス リサイクルプロジェクトについて皆様にお伝えしていきます。ラオスの環境と人々の生活を豊かにするこのプロジェクトの魅力に賛同していただける方はプロジェクトを通してのご参加をお待ちしております。ぜひ、本プロジェクトを通しSDGs達成・その貢献に向けて民際センターと力を合わせましょう!
私たちの生活にはなかなか馴染みのないバイオダイジェスター。日本でも中~大規模の設備を使用し家畜のふん尿などからバイオガス等の再生エネルギーを取り出す試みは行われていますが、まだまだ一般家庭や学校レベルでは気軽に利用されていません。ヨーロッパなどでは個人が一般家庭に取り入れる試みがされていますが、夜は気温が下がり発酵を進められないことがネックのようです。その点、ラオスは熱帯モンスーン気候で1年を通して最高気温が28度以上あり、発酵の条件が整っています。ここでは、バイオダイジェスターのメリットについて理解を深めるために、ラオスで実際に行われたバイオダイジェスター活用例をご紹介いたします。
※以下の事例は、EDFラオス事業所が関わったものではなく、バイオダイジェスターの販売店であるLaosBioGasが公開している事例からピックアップしたものです。民際センターがプロジェクトを実施する場合は、EDFラオス事業所を通して行われます。
ケース1:ラオス障がい者女性開発センター
ラオス障がい者女性開発センターで行われたバイオダイジェスター引き渡し式の様子
2020年夏、70人の職員を抱えるラオス障がい者女性開発センター(Laos Disabled woman Development Center)はバイオガスによる調理時間・コストの削減と液体肥料によるセンター内の畑の収穫量向上を目指して、バイオダイジェスターを導入しました。
導入した結果、以下のメリットがありました。
1)調理の負担軽減:同センターで調理は障がいをもつ女性が担当していましたが、日々木炭から火起こしする作業が大変でした。バイオダイジェスターから得たバイオガスを利用し、ガスコンロで調理することでより清潔な環境で調理することができ、作業も軽減されたことがわかりました。
2)衛生環境の改善:職員数の多い同センターからでる生ごみはとても量が多く、同センターはビエンチャン(都市部)にあることから週に一度のごみ収集車による回収による恩恵は受けていたものの、常に臭いや衛生上の問題がありました。バイオダイジェスターに生ごみをいれるようになってから、この問題は解決しました。さらに水分を含んだ生ごみと乾いた資源ごみが必然的に分別されるようになり、水分にさらされなくなった資源ごみは状態が良くなり、売ることができるようになりました。
3)肥料の活用:バイオダイジェスターから得られる液体肥料により、畑でとれる野菜が品質と収穫量の両面でよくなりました。70人の職員たちが、このオーガニック野菜を食べることで恩恵を受けています。
4)CO2の排出量の削減:同センターは調理する際木炭を使用しなくなったためカーボンフットプリントを削減(CO2の排出量を削減)することができました。
5)コスト削減:バイオガスを調理に使用することにより毎月木炭を購入する必要がなくなり、木炭代を支払う必要がなくなりました。
(左)同センターの入り口の様子。(右)バイオダイジェスター一式を納品するLaosBioGas(販売店)職員
ケース2:シエンクワーン民族学校
バイオダイジェスター設置のため、敷地内に積まれた大量の薪を移動させる教師たち
ラオス北東部に位置するシエンクワーン民族学校(Xieng Khouang Ethnic Highschool)は2020年冬に学校敷地内にバイオダイジェスターを設置しました。同学校は子どもたちの昼食用に校内の畑で作物を育てており、バイオダイジェスターのメリットへの期待から子どもたちや教師から設置が待ち望まれていました。
同学校では、設置により以下のメリットがありました。
1)薪代と薪割り時間削減:同学校ではすべての調理に薪を使用しており、学校の予算の多くが薪代として使われていました。毎月、同学校では約8トンの薪を使用しており、生徒と教師が分担して薪割りをしていました。
バイオダイジェスター1台の導入により薪が必要なくなったため、その分の予算を浮かせることができました。学校では現在2台目のバイオダイジェスター手配に向けて予算を貯めています。
薪の消費量は以前の2割となり、薪割りをする必要がなくなった生徒たちがより勉強に励むことができるようになりました。
2)衛生環境の改善:学校にはごみ回収がなく、決められた生ごみの捨て方がありませんでした。バイオダイジェスターを使うようになって臭いの問題が解決し、学校周辺の衛生環境が向上しました。
校内の畑の様子。学校で昼食を食べられるということは特に貧困家庭の子どもが学校に継続して通うために重要です。
そのほかにも、毎月40kgのガスタンク一本分のバイオガスが利用可能になった職業訓練学校附属のカフェやアッタプー州立病院の事例や、シエンクワーン県のコーヒーショップで燃やして処理していたコーヒー豆の殻をバイオダイジェスターによるリサイクルし、得られた液体肥料をコーヒー農園のために使っている事例などがあります。すべてのケースにおいて学校であれば教師や生徒、職場であれば職員たちが自らの手でリサイクルを実践しています。結果として、現地の人々が自分自身が環境やごみ問題について考える機会を得ることができるようになりました。
本プロジェクトは設置するまでが目的ではなく、設置後子どもたちが学習できているか、さらに1年後には予定したリサイクルが実施されているかをモニタリングし支援者様にご報告するところまでを行っています。現地のニーズを一番よく知るラオス事業所は、記念すべき1台目の導入を強く望んでいます。この記事を通してリサイクルプロジェクトの魅力が皆様に伝わり賛同者が広がることを願っています。どうか皆様のお力添えをお待ちしております。