少数民族教師養成奨学金


ラオスには、50の少数民族が暮らし、その数は人口の過半数近くを占めます。彼らは、公用語のラオ語とは別のそれぞれに固有の言葉を話します。しかし、学校教育はラオ語で行われるため、特に小学校に通う生徒は先生の話す言葉が理解できず、それが原因で中途退学していく生徒もいます。そのような状況を受け、民際センターでは、2004年から少数民族出身の学生たちが教師になることを支援するための奨学金を実施してきました。

【少数民族の教育環境】

※サワンナケート教師養成校にはサワンナケート県・カムアン県から、サーラワン教師養成校には、サーラワン県・セコーン県からそれぞれ学生が通っています。

教師不足の改善と、公用語での授業理解
教師数の不足は、ラオスの教育において重要な問題の一つです。少数民族の多くは、雨季になるとアクセスが困難になるような山間地域などに住んでおり、雨で村への道が冠水してしまうと、舟で川を渡らなければたどり着くことはできません。また少数民族の住む地域では、電気は近年ようやく普及してきたものの、水道、電話、インターネットなどはまだ整備されていない村が多くあります。そのため、村の学校で教える教師を見つけるこは困難を極め、教師1人が1学年60人以上のクラスを複数受け持たなければならない場合もあります。多民族国家であるラオスは国民の団結を目指し、ラオ族の言葉だけでの教育を実施する政策をとっています。ラオ語が理解できない少数民族の子どもたちは、授業についていくことが非常に難しく、それが原因で留年や中途退学を余儀なくされる生徒が多くいます。

ラオス政府の取り組み
そのため、ラオス政府は小学校の敷地の中に小学校準備クラスを設け、早期から公用語に慣れ、小学校入学後の授業理解に必要な教育を提供する取り組みを行っています。しかし少数民族出身の教師が足りず、現場で教える教師の多くはその民族固有の言葉が分からないため、子どもと教師のコミュニケーションをとることすら難しい現状がラオスの教育環境をさらに厳しくしています。

少数民族のための奨学金の意義
このような状況を改善するため、民際センターでは、2004年から少数民族出身の教師を養成するプログラムを実施し、教師志望の少数民族出身の学生たちが教師養成校で勉強できるように、奨学金を支給しています。教師養成コースで学び教師免許を取得した奨学生は、出身村の学校で教える資格を得ます。そして授業中に少数民族の言葉で補足説明することで、子どもたちの授業の理解度と就学率の向上に貢献することができます。残念ながら、多くの少数民族は経済的に恵まれないためその教育レベルは低く、職業の選択も限られるという「貧困の連鎖」の中で苦しんでいます。少数民族出身の教師を養成することは、少数民族地域の教育発展に大きな役割を果たします。さらに、その地域で育った教師の存在は、子どもたちに夢を与えるロールモデルとなるでしょう。

【 目 的 】

少数民族教師養成

1. 主にラオス山間地域の少数民族出身の高等学校卒業生が教師資格を取得し、出身地域で教えられる機会を提供します。

2. 少数民族が暮らす山間地域の教師不足問題を改善します。

3. 少数民族の子どもたちの教育環境を改善し、言葉の相違による中途退学者を減らします。

【 概 要 】

ラオスの少数民族出身で、高校を卒業し教師養成校に通う生徒に4年間の奨学金を提供します。
※ラオスの政策変更により、2023年秋から支援対象である教師養成校の2年コースが廃止され、4年コースのみが提供されることになりました。それに伴い民際センターでは、2023年秋入学の奨学生から支援対象を4年コースに変更して本奨学金事業を継続しています。

対象となるコース

幼稚園(小学校準備過程)・小学校・中学校の教師養成 4年コース
※2023年度より、小・中学校の両方で採用の可能性のある中学校教師養成コースも支援対象に含みます。

対象となる教師養成校

サワンナケート教師養成校(Savannakhet Teacher Training College)
サーラワン教師養成校(Saravan Teacher Training College)

※民際センターではTeacher Training Collegeを長年「教師養成短期大学」と表記してまいりましたが、2024年1月より「教師養成校」としました。

【費用】

卒業するまでの 4年間、1名あたり 60万円(15万円/年)
*ご支援は「卒業まで一括払い」「卒業まで毎年払い」の2種類からお選びいただけます。

*ご支援中の学生が中途退学した場合は、中途退学の理由をご報告の上、同じ学校の同学年で支援を必要としている学生に翌年以降の奨学金を割り当てさせていただきます。ご了承ください。

【奨学金の提供方法】

奨学金支給が決まると奨学生が本人名義の銀行口座を開設し、授業料は学年の始めに年1回ずつ振り込まれ、生徒から学校へ納付します。生活費は隔月で振り込まれ、家賃・食費などに使用します。

*学期の途中で支援生徒が中途退学した場合は、学費を納入済みの同学年の生徒から新しい支援生徒が選定されます。新しい生徒には、旧生徒の中途退学時点での残りの生活費が支給され、次年度からは満額の奨学金が支給されます。

【お申し込み後のスケジュール】

2023年入学生から(卒業まで4年コース)

 

【報告書】

支援者様には、下記のような報告書を送付させていただきます。
*各報告書の送付は、現地でのオペレーションの遅れや郵便事情等により、1~2ヶ月遅れる場合があります。ご了承ください。

【A】奨学金証書(各学年の12月)
ご支援いただく奨学生の氏名や写真などの情報をご報告します。

【B】 1~3年目終了報告書 (各学年の8月
奨学生が通う学校や学生生活の様子、奨学生からの感謝のメッセージを写真とともにご報告します。

サワナケート教師養成校の図書館前にて

【C】 卒業報告書(10月)
卒業式の写真、卒業証書の写真、ご支援いただいた奨学生からの感謝のメッセージをお届けします。

卒業証書の写真

 

ラオスにおける新規教師採用の現状

国勢調査によると、教師は慢性的に不足していて、ビエンチャン近郊では教育に携わる職業に就く人が48,000人1)を超えていますが、民際センターが支援する地方では32,000人1)に届きません。このことは、収入の少ない人々が住む地域における教師の不足をさらに深刻にしています。また、2015年以降の教師の人件費に割かれる国家予算は微増していますがその中で小学校の教育に割かれる予算は削減されています。
また、ほとんどの学校が公立学校のため、私学学校の教師以外は公務員です。民際センターラオス事業所の所長の報告によると、近年、ラオス国内の景気の悪化や国家予算の削減で、政府は公務員の新規採用を2017年は3,000人、2018年は1,500人、2019年は1,500 2)としていて、その数は、減少傾向にあります。 そしてその傾向は、教師養成校の卒業生が教職に就くことを難しくしています。一方、教育現場では、教師(ここでいう教師とは有給で働く教師)が不足しているため、地域によっては村人や学校が、食費、住居、交通費などを融通して、新しい先生を無給、つまりボランティアで受け入れる試みを行っています。それらは地域と無給で働く教師との合意の上で行われおり、ボランティア教師が将来、その地域の教育機関や学校やで有給で働けることを条件にしています。しかし、給与をもらえるまで長い時間がかかるため、そうした無給の教師の数が近年増え続けています。政府としても、すべてのボランティア教師を有給で雇うことができないため、村が新しい無給の教師の受け入れさえも制限し始めています。こうした影響を受け、近年、民際センターが支援する「少数民族教師養成奨学金」の受給生の中にも、卒業後に教師として働けないケースも見受けられます。

残念ながら、ラオス政府における教育予算の削減による教師の採用枠の減少は、民際センターが解決できる問題ではありません。ですが、支援地域における教師の不足は深刻です。子どもたちへの教育に教師不足の改善は不可欠と考え、教師への支援も視野に入れつつ、民際センターは、引き続き少数民族教師養成への支援を続けてまいります。

<引用資料>
1)  LAO STATISTIC BREAUによる2015年国勢調査

2)  Laos 360°C (ラオスの新聞)

~元奨学生からの感謝の手紙①~

ラオスの少数民族「タリアン族」出身のペッナリーさんは、現在25歳。少数民族教師養成奨学金のサポートを得て、サーラワン教師養成校を2018年に卒業しました。卒業後からずっと無給のボランティアとして僻地の学校で働いています。結婚して子どももいますが、自宅から遠く離れた学校で働いているため、平日は家族と離れて学校のそばにある寮に滞在し、雨が降っていない週末にだけ家へ戻る生活を続けています。有給雇用の教師になるチャンスを待ちながら、教師という理想の仕事に情熱を注ぐ日々を送る彼女から届いた1通の手紙をご紹介します。(2022年8月)

ペッナリーさんが教える学校の校舎と子どもたち

支援者様、EDF*関係者の皆様

(*EDF…The Education for Development Foundation、民際センターを含む各国事業所の総称)

私はペッナリー・シャイアセンと申します。セコン県ダクチュン郡にあるノンサヴァーン村で暮らしています。2017年から2018年まで少数民族教師養成奨学金のご支援を受け、2018年に卒業しました。卒業後の2019年からボランティア教師に志願し、働いています。

現在、セコン県ダクチュン郡のアヨウン小学校の小学校準備過程で教えています。学校は私の住む街から42km離れた農村地域にあります。学校までの通勤路はぬかるんだ泥道で、乾季にしか通ることができません。電気、電話、インターネットはなく、水道もありません(私たちはセカマン川の近くで水浴びをします)。この村への行き来は非常に困難です。

学校には3教室しかありませんが、そこで6学級が学んでおり、小学校準備過程から小学校5年生までのクラスがあります。生徒数は、女生徒55人を含む計94人です。私は小学校準備過程で24人の子どもたち(うち女生徒12人)を教えています。

校外学習にて 一番左がペッナリーさん

暮らしは厳しいですが、ここで頑張る道を選びました。生徒たちには、皆等しく教育を受ける権利があるからです。この権利を実現すべく、彼らの力になりたいと思っています。それが私の喜びです。

私が教えるアヨウン小学校は私の住む地域から非常に遠く、この数年間、家族を家に残して教えに来ています。雨季・乾季などの天候に関わらず、教師を辞めようと思ったことは一度もありません。ダクチュン郡の街から学校まで向かう道すがら、私はいつも生徒たちの顔を思い浮かべ、この国に訪れる未来や希望にも思いを馳せます。子どもたちが私を待っています。

最後になりますが、支援者様、そして奨学金を通じて私への教育支援に関わってくださったすべての方に、深い感謝と御礼を申し上げます。また、国民の発展をめざす政府の政策、とりわけすべての子どもたちがもれなく教育を受けるための政策についても、感謝しています。

手紙の文面と、子どもたちと微笑むペッナリーさん

ペッナリーさんの学校のある村では、子どもたちも村人も公用語であるラオ語を話すことができず、タリアン族やカトゥー族など地元少数民族特有の言葉だけを話します。彼女が志を高く持ち続けるモチベーションは、都市部と農村部の大きな教育格差を見てきた経験にあります。彼女はいつも村の生徒たちのことを考え、私財を費やしながら、困難に立ち向かい続けます。子どもたちと向き合い、「子どもたちが学べることこそが喜び」であることを思い出すたびに、彼女は何度でも強さとやる気を取り戻すのです。少数民族の言葉を併用して教えられるこうした教師の存在は、少数民族が暮らす地域の教育の発展に大きな役割を果たしています。

 

~元奨学生からの感謝の手紙②~

次に、ラオス少数民族教師養成奨学金のサポートを受けた元奨学生からの2022年度卒業報告と、そのご支援者様からのメッセージをご紹介します。

バエンさん:卒業の喜びを、2年間支えてくださった支援者様へ

親愛なるお母様 Y.S. 様

いかがお過ごしですか? 私はこちらでとても元気に過ごしています。

はじめに、Y.S.様の温かいご支援に対し、感謝の気持ちを伝えさせてください。今日という日は、私の人生で素晴らしい日です。サワンナケート教師養成校から、卒業証書を受け取ることができたからです。Y.S.様からの2年間のご親切な支えがあったからこそ、私はこうして学びを終えることができました。

私はとても幸せです。短大での学びを叶えてくださったご支援に対し、改めて、心より御礼申し上げます。あなた様のご厚意を受け取った記憶は、私の中で永遠に生き続けるでしょう。

最後になりますが、Y.S.様がいつまでもお元気で長生きされますこと、そしてお仕事で成功されますことをお祈りいたします。私を支えていただき、ありがとうございました。

心を込めて

バエン ケオマニバン

卒業証書を手に笑顔のバエンさん

Y.S.様:バエンさんをサポートされた支援者様からのメッセージ

コロナ禍にもかかわらず無事ご卒業されたとのこと。

おめでとうございます。

通常の授業とは異なり、いろいろと大変だったことと思います。

その中でもお友達同士、楽しく学ぶことはできたのでしょうか?

お写真を拝見しながらバエンさんの学生生活を想像し

遠いラオスで頑張っている娘を応援している気持になります。

 

ラオスはまだまだ教師が足りないとお話を伺いました。

しかし、こうして一人、また一人と確実に教師になり

教師を渇望している地域へ行って子どもたちに教育を届けていると

この支援を通して実感します。

 

自分にできることは限られていますが

私の代わりに彼女たちがラオス社会で活躍してくれる姿を思うと

これからもこの支援を続けていこうという気持ちになります。

教師養成短大から授与されたバエンさんの卒業証書

~元奨学生からの感謝の手紙③~

こちらは教師養成校を卒業後、晴れて幼稚園の小学校準備過程クラスで教鞭をとるコイマニーさんからのお手紙です。奨学金支援への感謝の気持ちが綴られています。

 

コイマニーさん:教師として働く日常と、元支援者様への想い

こんにちは。私の名前はコイマニーです。

現在サワンナケート県のアーサパントン郡にある村に住んでいます。

県内のドンゲン地区に建つ私立の幼稚園で教師をするようになって1年が経ちます。子どもたちを教えることは私にとってとても幸せなことです。学ぶことがみんな大好きで、いつも素晴らしく明るい笑顔を私に向けてくれます。

私に奨学金のサポートをしてくださった支援者様には本当に心から感謝しています。そのご支援によって私は教師養成校を卒業することができ、現在教師になれているからです。

あなたが健康で幸せでありますように、そしてすべての面で成功され、あなたの願いが叶いますように。

コイマニーより

教師になったコイマニーさん

コイマニーさんが勤務する学校

小学校準備過程クラスで教えるコイマニーさん

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少数民族出身の学生が、サーラワンやサワンナケートの教師養成校に通学するためには、故郷の村から片道5時間かかる生徒もいます。都市部に暮らす学生に比べ、距離的にも金銭的にも不利な状況にある少数民族の学生にとって、学費・寮費・食費などを賄うことができる「少数民族教師養成奨学金」は、未来の可能性を広げるためのかけがえのない支援です。この支援は少数民族の学生が教師になる道を切り拓くだけでなく、少数民族の村でこれから生まれ育つ子どもたちが、民族固有の言葉とともに、公用語であるラオ語を新たに用いながら初等教育を学びぬき、中等教育へとつなげるためのサポートも意味します。

ラオスの国家教育予算が削減され、教師の採用枠も減少傾向にある中、それでも故郷の村で子どもたちを教えたいと熱望する少数民族学生たちへのご支援を、ぜひご検討いただけますようお願いいたします。

 

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