カンボジアの学校にトイレを!( 学校における衛生課題の改善)
カンボジアの地方の学校におけるトイレ事情をご存知ですか?
学校のトイレが衛生的でないために多くの生徒や先生方が病気になっています。また、水が流れない等機能しないトイレを使うことをためらうため、生徒たちが安心して学校で勉強することが難しくなっています。民際センターでは、生徒たちのために清潔なトイレ環境を作り、安心して教育を受けられるように、カンボジアの学校にトイレを建設するプロジェクトを開始しました。
Ⅰ.初めに
カンボジア政府は、2003年に地方における水道整備、トイレ、衛生に関する政策を立案しました。
この政策は、2025年までにカンボジアの地方に暮らす人々が安心して使うことができる、水の供給、トイレ等の衛生環境を整備することを目的としています。
カンボジアの教育青少年スポーツ省は、生徒や教師たちが水道とトイレ等が整っている環境の下で学校生活が送れるように「学校における水道・トイレ・衛生に関するガイドライン」を作成しました。カンボジアの地方では、清潔なトイレが設置されている学校はほとんどありません。不衛生なトイレが原因となり生徒や先生が、下痢や細菌性呼吸器疾患を患うことは大きな問題で、これらを減少させるために省は清潔なトイレ建設に取り組んでいます。国もこの不衛生なトイレにより引き起こされる問題を栄養失調と同じように解決すべき重大課題としてとらえています。
カンボジアの地方にある学校のトイレ
このガイドラインの目的は、学校における水道・トイレ・衛生環境を強化するためで下記のカテゴリーに分かれて推進できるようになっています。
カテゴリー1.飲料水
カテゴリー2.便器(女子用と男子用)
カテゴリー3.手洗い場
カテゴリー4.環境と安全
このガイドラインは、環境を改善することにより星の数で評価され一つ星の学校から、二つ星の学校、さらに上の三つ星の学校に上がれるようなプログラムも兼ね備えています。
一つ星の学校とは、基本的なトイレ施設、すなわち少なくとも1つの女子用と1つの男子用トイレがあり、教室には飲み水用の瓶があることが必要になります。
二つ星の学校とは、一つ星の条件に加えて飲み水が完備されていて一つ星の学校より多くのトイレがあり生徒たちが使える洗面器が用意されていることが条件となります。
三つ星の学校とは、25人の生徒に対して1つのトイレが設置されていて二つ星より多くの洗面器やごみの分別システムが設置されている学校を指します。
Ⅱ.本プロジェクトの背景
カンボジアでは、ポル・ポト政権が崩壊した1979年に教育環境の復旧が始まり、1993年に国連監視のもと第1回制憲議会選挙が⾏われる頃には、国際機関や⺠間団体からの⽀援を受けて多くの学校が再建され、教材も使えるようになりました。
校舎も再建され、学用品は使えるようになったのですが、学校のトイレや上下水道施設は不足したままでした。決して衛生的とは言えない環境の中では生徒たちの健康が害されやすく、特に問題になっているのは女子生徒の低就学率につながる点です。
公立の学校では、生徒の数に対して適正な数のトイレが設置されます。しかし、それらのトイレは流れない、手洗い場や洗浄設備が十分ではない等の問題を抱えています。
以下は、2018年度の教育統計になります。
・学校の状況
・学校による就学生徒数の違い
「学校における水道・トイレ・衛生に関するガイドライン」によると小学校には5~10のトイレが、中学校は10~15のトイレが必要です。
民際センターは、ガイドラインに沿ったトイレ建設をプロジェクトとして実施します。これが実現すれば、地方の学校でも生徒たちが政府が推奨する普通のトイレ施設を使用でき、彼らの健康が保証されるからです。
人生にとって最も大事なことは健康である
この考えは、教育環境に関しても同じことが言えると私たちは考えています。
Ⅲ.プロジェクトの概要
①トイレ建設プロジェクトの目的
このプロジェクトの目的は、トイレ設備を完備することによって学校の衛生環境を改善するものです。このトイレ施設には手洗い場が備え付けられ、皆が安心して使いやすい以下からなる施設となっています。
・建設資材:コンクリート(全体)、クレイブロック(壁)、タイル(床)、亜鉛(屋根)
・装備品:井戸、ポンプ、タンクタワー、水槽、浄化槽
建設するトイレのイメージ
②プロジェクト実施後のあるべき姿・目標
このプロジェクト実施後のあるべき姿は、衛生環境に配慮したトイレを建てることで学校の衛生や自然環境を改善できることです。不衛生なトイレで子どもたちが感染病にかかることも少なくなるでしょう。さらに、使用できるトイレが生徒の数に見合うだけあれば、休み時間にトイレに並ぶもしくは家に帰って用をたさなければならないということもなくなり、授業に遅れることもなくなります。
このプロジェクトによって、安心して学校のトイレに行くことができるため学校を欠席する生徒が減ることが予想され、腎臓や膀胱の疾患も防ぐことができます。特に女子生徒は、状態の悪いトイレに行きたがらず、放課後までお手洗いを我慢して、これでは膀胱炎にかかりやすくなっています。この事業が一つでも完成すれば、その地方の学校におけるトイレ建設のモデルとなり、全国的に広ってほしいと願うばかりです。
③短期的な目標
(1)トイレ環境を整えることにより生徒たちの健康状態を改善する
(2)特に女子生徒の腎臓や膀胱の疾患を予防する
(3)トイレの待ち時間による授業への遅刻を減らす
(4)女子生徒の就学率を増やす
(5)学校における衛生環境を改善する
④長期的な目的
(1)地方の学校におけるトイレを提供する
(2)学校でトイレを使うことを習慣づける
(3)地方の子どもたちや社会に衛生や環境について学ぶ機会となる
(4)他の学校のロールモデルとなる
(5)生徒たちの健康状態を改善する
健康であれば何でもできる
学校の生徒たちにも同じこと伝え、実現したいと私たちは考えます。
Ⅳ.期待できる効果
このプロジェクトは生徒たちの健康維持、学校の衛生や環境に大きな効果を発揮します。衛生的なトイレを提供することにより、地方の生徒たちは授業を時間通り受けることができ、公衆衛生について考える機会にもなります。そして、その生徒たちが家族やその地域の人たちに衛生や環境への効果を伝え、地域全体を啓もうすることができます。
①プロジェクトの重要性
このプロジェクトは、教育青少年スポーツ省が作成した「学校における水道・トイレ・衛生に関するガイドライン」に基づき、学校における排せつ、手洗い、環境における安全を高めます。衛生環境の改善は下痢や菌による呼吸器疾患等の感染症を減らし、特に女子生徒の就学率が上がることが予想されます。
②プロジェクトの影響
このプロジェクトは、学校の生徒と教員のみならず、地域の人たち、他の学校の関係者にも公衆衛生について学ぶ機会を与えます。
Ⅴ.トイレを必要としている学校の一例
チェ シム カンポン トララーチ中・高等学校
この中・高等学校は、プノンペンから70km北にあるカンポンチュナン県、さらにその県の中心地から20kmを隔てたカンポントララーチ郡にあります。
カンボジアでは珍しくないのですが中学部と高等部を一人の校長が兼務しており、2019年度、全校生徒は1,405人、うち女子生徒は763人、中学部は682人、高等部は723人が在籍しています。
「現在、本校は6つのトイレしかなく、そのほとんどの状態が悪く、時には水が流れない時もあります。手洗いや浄化槽もありません。」とデア ロスピセイ副校長は言います。
「生徒たちは、トイレの順番を長く待たなければなりません。何人かは、我慢できずに家に帰って用をたします。そして、授業に遅れて勉強について行けなくなり、何人かは学校を欠席しがちになります。」
学校のトイレの現状について語るデア ロスピセイ副校長
特に女子生徒や女性の先生方は、学校のトイレは状態が悪く、水が流れないことが多いので学校にいる間はトイレに行くことを我慢する人もいます。
トイレに行かないために水分を摂取しないことによる健康被害は大きく、腎臓や膀胱の疾患につながりかねません。
生徒たちの健康を守り、今後この衛生的なトイレをカンボジアの地方に建設するためにもチェ シム カンポン トララーチ中・高等学校を始めとするカンボジアの学校へのトイレ建設の支援をお願いします。