カンボジア:都市と農村の教育格差を支える奨学金
カンボジアでは、農村部に住む多くの人々が貧しい生活に陥っています。彼らのほとんどは小さな農地しか持たないか、あるいは農地がなく、農作物を作ることすら困難です。農業に見切りをつけ、村から都市部へ仕事を探しに行く人々もいますが、そこでは自動車清掃、工事現場作業などの正規雇用ではない仕事に就くことになります。
農村部の子どもたちはというと、家計を支えるために家族の手伝いをしたり仕事を探したりしなければならないケースが多く、都市部に暮らす子どもに比べて休む暇がありません。またそういった貧しい家庭の食事は簡素で栄養に乏しいことが多く、また朝食を食べることができずに学校で集中力が続かない子どももいると言います。
コンポンチュナン州の農村部から、2つの家族の暮らしぶりをお伝えします。
ダラさん 一家
小学6年生のソリヤ・ダラさんは2人きょうだいの長女です。父は数年前に亡くなったため、母子家庭です。母は小学校を卒業後、農業に従事してきました。小さな畑で少しの作物しか採れず、家族を養うには十分ではありません。近隣で農業以外の仕事を探しては働きますが、定職ではないため、それでも1日700円ほどしか稼ぐことができないそうです。
算数が好きで、将来は看護師になりたがっているダラさんですが、母は次のように心配しています。「ダラは来年、中学校でも勉強したがっています。学校はここから約10km離れており、娘の勉強を支えてあげるには困難を伴います。ダラには良い教育を受けさせてあげたいです。そうすれば立派な看護師になれると思います。しかしこの先あと何年も勉強を続けていかなければならないので、その間に何が起こるかわからず、不安を抱えています。」
外で教科書を読むダラさん
チャンティくん一家
イェン チャンティくんは小学6年生で、中学1年生の姉がいます。好きな科目は算数。将来の夢は警察官です。
チャンティくんの両親は都市部で仕事を探すために村を出ていきました。この村には仕事が無いからです。チャンティくんと姉は、祖母と一緒に暮らしています。両親から送られる月10,000円の仕送りで生計を立てています。仕送りが無い月もあるため、そんな時は近所から食費を借りることになります。
チャンティくんが話してくれました。「卒業するまで勉強したいです。そうすれば警察官になれると思います。でもぼくの家は貧しいので、この先勉強を続けられるかどうかはわかりません。」
祖母と一緒に座るチャンティくん
小さな畑では成り立たない自給自足の生活や、慢性的に仕事がない農村部の状況。これらは貧困から抜け出せないことや、都市部に比べて農村部の教育が十分ではないことの大きな要因になっています。
ダラさんやチャンティくんのように「看護師になりたい」「警察官になりたい」という夢があっても、必要な教育を途中で受けられなくなってしまえば、その夢を叶えることは難しくなります。こういった都市部と農村部の教育格差を少しでもなくすため、民際センターは「ダルニー奨学金」を通じてメコン5ヵ国の子どもたちの中学就学を支援し、貧困削減を目指しています。
カンボジアの奨学金の締切は7月31日です。
「ダルニー奨学金」は、ドナー1人につき1人の子どもを支援し、子どもには誰が支援してくれているのかを伝える、顔が見える、成長が見守れる、1対1の国際里親制度の教育支援システムです。1日当たり40円、月々1,200円、年間14,400円の支援で、子どもが1年間学校に通うことができます。