各国最新レポート:【Vol.2:ベトナム】深刻な第4波
メコン5ヵ国の新型コロナウイルスの状況と、それに伴い変動している教育の状況について、5回のシリーズでお届けしています。
第2回目は、ベトナムの事業所所長のバンから、ベトナムの最新情報をお届けします。状況は刻一刻と変わっていますので、あくまでも現時点での情報になりますが、支援されている奨学生がいらっしゃる方は想いを馳せながら読んでいただければと思います。
【これまでのコロナの状況】
2020年4月にコロナの感染者が初めて確認されて以来、約1年半近くはコロナの感染対策に成功した国の1つでした。入国者全員を14~21日間隔離し、感染者が確認された場合はその地域全体を封鎖し、濃厚接触者も隔離し対応できていました。
しかし、2021年4月下旬から現在に至る第4波で、デルタ株の出現や無症状感染者が確認されるようになり、これまでの方法では対応できなくなりました。感染が拡大し1日に数百人の感染者が出るようになると、都市封鎖や濃厚接触者の追跡も困難になりました。
9月27日現在、感染者総数は約76.6万人、死者は約18,758人に上ります。政府は全国での感染拡大を抑えることができなくなり、厳しいロックダウンを実施し外出禁止令を出しています。それに伴い、国内輸送も困難になり食料供給が滞り、特にハノイ市とホーチミン市では深刻な影響が出ています。また、ベトナムでは他国からワクチンの購入がうまくいかず、現状では寄付されたワクチンに頼るしかないため、ワクチン不足が深刻で接種は進まず、死亡率が非常に高くなっています。
【学校への影響】
通常、4月中旬から下旬に学年末試験が行われ、5月初旬に夏休みが始まりますが、今年はコロナの感染拡大防止のため、ベトナム全土の学校では試験を前倒しで行い、学生たちを早く夏休みに入らせました。また、新学期は例年8月中旬から始まりますが、今年は教育省が開校を遅らせる方針を出し、開校式は9月5日となりました。しかし、これは目安で、入学式や開校式の日程は、それぞれの地域の感染リスクによって変わります。現在、一部の学校では生徒の登校が可能となっていますが、オンラインのみで授業が始まった学校が多い状況です。
【生徒の状況】
コロナによる移動制限、外出禁止令により、多くの企業や工場は経営が困難になり、たくさんの人々が失業し経済的な問題を抱えています。親から学校に行くためのサポートを受けられなくなった子どもたちも多くなり、中途退学率が上昇しています。また、コロナの感染により命を落とす人々も多く、両親を失い孤児になる子どもたちが増えています。ぜひこの機会に、ベトナムの子どもたちへのご支援をご検討いただけますと幸いです。
【地図を6色に分けて危険度表示】
現在、ベトナムでは感染リスクを目に見える形で表すため、地域を6色で色分けしています。
厳しい外出禁止令が発令され、深刻な隔離がされている地域【オンライン授業のみ可】
・暗い赤(危険)
・明るい赤(非常に高いリスク)
・暗いオレンジ(高いリスク)
・明るいオレンジ(リスク)
隔離が警告されている地域、自宅待機が求められている地域【オンラインまたは教育省のガイドラインに沿って登校が可】
・緑(危険度は低いが監視が必要)★ダルニー奨学金支援の対象地域
・青(安全)
ダルニー奨学金の提供地域であるドンナイ省とタイビン省は、現在緑の地域に属しており、8月23日から一部の学校では生徒が登校し授業を受け始めています。支援地域は県庁所在地や郡庁所在地でなく、奨学生は農村地帯に住み、最寄りの町の学校に畦道を徒歩や自転車で通っています。このことが幸いし、現在、感染リスクは低い状況にあります。
【なぜ一部の学校のみ再開なのか】
・いくつかの学校は、コロナの隔離施設として建物が一時使用されることになり、教育の場として使えない状況があります。
・夏休み中に、生徒の多くは地元を離れアルバイトをしたり、他の地域の親戚を訪ねました。その最中に全国的な都市封鎖が行われ、地元に戻ることができなくなった生徒が大勢おり、クラスを編成するには学生数が足りない状況があります。(生徒が地元の学校に連絡し、足止めされている地域の学校で一時的な入学許可を得て、学年に応じた教育プログラム受けられる場合もあります)
【ベトナムのオンライン学習の状況】
昨年、ベトナムの都市部ではオンラインでの授業も導入されました。外出禁止ではなかったため、パソコンを持たない生徒は、パソコンを持っている生徒の家に集まり一緒に勉強することができましたが、今年は外出禁止となったため、オンラインで授業を受けることができなくなった生徒もいます。
【オンライン学習の課題】
生徒にとって
・パソコンを持っていてオンライン学習が可能な生徒でも、全科目を受講できるのはその約半数です。家庭にパソコンがあったとしても1台のため、同じくオンライン授業を受ける兄弟姉妹と同時にパソコンを使うことができないからです。パソコン使用の優先順位を決めて、代わる代わる授業をオンラインで受ける状況となっています。
・パソコンを持たない生徒や自宅にパソコンがあっても上記のように授業に全て参加できない生徒は、オンライン授業に参加している同級生からノートを借りなければなりませんが、ロックダウン中で難しい状況があります。
教師にとって
・国語や社会などの科目は、先生が教科書を読み生徒がノートを取る形でできるので、オンラインで教えることができます。しかし、数学や自然科学、英語などの科目は、オンラインで先生が話すだけでは難しく、先生が資料を準備し配布したくても学校でしか印刷はできず、さらにロックダウンにより渡すことも難しい状況にあります。
*ダルニー奨学金の提供地域であるドンナイ省とタイビン省では、パソコンの普及率は極めて低く、オンライン学習は現在不可能な状況です。
9月27日現在の新規感染者数はまだ1万人を上回っている状況にあるベトナム。ワクチンの接種も進んでおらず、死亡率が高い深刻な状況が続いていますが、ダルニー奨学金の支援地域では学校への登校も始まっています。子どもたちが継続して教育を受けることができるようにベトナム事業所はその動向を見守り、奨学生を精一杯サポートしていきますので、どうぞご支援よろしくお願いいたします。
「ダルニー奨学金」は、ドナー1人につき1人の子どもを支援し、子どもには誰が支援してくれているのかを伝える、顔が見える、成長が見守れる、1対1の国際里親制度の教育支援システムです。1日当たり40円、月々1,200円、年間14,400円の支援で、子どもが1年間学校に通うことができます。