絵本に込めたミャンマーの子どもたちへの想い
民際センターを通じて、メコン5カ国の子どもたちに奨学金やプロジェクト支援をしてくださっているT様。2022年、民際センターミャンマー事業所を通じてたくさんの絵本を現地の小学校へ寄贈してくださいました。絵本が子どもたちの元へ届くまでに長い時間を要しましたが、「寄贈されるまでの経緯」や「ミャンマーへの想い」について、T様ご本人にお話を伺いました。
2021年2月1日、ミャンマーでのクーデターのニュースに心を痛めた方は多いと思います。
私もその1人でした。「何かできないか?」と思っている時に、民際センターからミャンマーの子どもたちへの教育支援のメールを受け取りました。少しでも力になれたらと、すぐにダルニー奨学金へ申し込んだのですが、混乱の中で奨学生の情報がなかなか届かず。やっと届いたミャンマーの奨学生の写真にホッとしたのを覚えています。
その後もニュースなどでミャンマーの学校が閉鎖されていることや、新型コロナウイルス感染拡大の影響により学校の再開がなかなか進まないとの情報が流れてきました。
1年近く休校が続いたため、国の決定により全生徒が進級を見送られ、留年になってしまうという、日本では考えられない状況にも驚き、ミャンマーで起こっていることに、ただただ、ため息しか出ませんでした。
学校へ通えない不安の中で、ミャンマーの子どもたちに何か喜んでもらえることはないかと考えた時、「ミャンマー語の絵本を贈れないか?」と思い立ちました。
ミャンマー語の絵本をインターネットや本屋で探しましたがなかなか見つからず、やっと見つけたNPO「食中毒からアジアの子供を守る会」からは『小学生用の衛生教育絵本』の無償提供を、NGO SOSIA事務局からは『ふくちゃんのぼうけん』の原画の使用許可をいただきました。
また、在沖縄ミャンマー人会の協力を得て、私が準備した絵本の翻訳をしていただくことができました。絵本を準備できる段取りがつき、民際センターを通して、ミャンマーの現地事業所へ意向の確認をするまでに半年近くが経っていました。
日本から、無事ミャンマーの現地事業所に絵本が届いた後も、子どもたちのもとへ絵本が届くまでには更に半年近い月日が必要で、本当に忘れていた頃に民際センターから絵本を手にする子どもたちの写真が送られてきた時には、驚きと喜びがひとしおでした。
日本の民際センターの皆さまをはじめ、ミャンマー現地事業所のスタッフの方の理解と協力がなければ、子どもたちのもとへ絵本を届けていただくことは本当に難しかったと思います。
今回の絵本を贈ることは、関わってくれた全ての人たちのミャンマーの子どもたちへの熱い思いが繋がったのだと、あらためて感じています。
絵本を贈りたいとの思いつきから、絵本が実際に子ども達の元へ届くまでに1年近くかかってしまいましたが、政権の混乱する中で、届けていただいた絵本と子どもたちの写真は、私の大切な宝物でもあります。本当にありがとうございました。
クーデターから2年以上が経った今でも軍事政権が続くミャンマー。民際センターでは、ミャンマーの子どもたちが安心して学べる日が来ることを願いつつ、教育と政治とを切り離して考え、これからもミャンマーの子どもたちの教育の機会を守るために活動を続けてまいります。