ラオス訪問:教師を目指す少数民族出身の学生たち
50の少数民族が暮らす多民族国家ラオスは、国民の団結を目指し、公用語であるラオ族の言葉だけでの教育を実施する政策をとっています。少数民族はそれぞれ固有の言葉を持ちますが、小学校に上がると一斉にラオ語での授業が始まるため、ラオ語が理解できない少数民族の子どもたちは授業についていくことが難しく、留年や中途退学を余儀なくされる生徒が多くいます。
民際センターの教育支援の一つである「ラオス少数民族教師養成奨学金」は、こうした少数民族の子どもたちに民族固有の言葉を併用して授業を教えられる教師になることを目指す、“少数民族出身”の学生たちをサポートするプログラムです。
先日、本奨学金の支援対象校の一つである「サワンナケート教師養成大学」を訪問しましたので、学校と奨学生たちの様子をご紹介します。
教師になりたい学生が減っている
学内のオフィス
1966年に設立されたサワンナケート教師養成大学には19の建物があり、講義室、学生寮、講師寮、図書館、研修室、医務室、学生食堂などで構成されています。1989年まではラオス南部6県から学生たちが通っていましたが、その後近隣の県にも教師養成校が設立され、現在はサワンナケート県とカムアン県からの学生を受け入れています。
まずオフィスで職員の方々に挨拶を済ませ、学内を見学させてもらいました。緑が生い茂る敷地内にたくさんの建物が立ち並び、デモ授業が行われる付属の小学校もありました。
学内の様子/正面奥に見えるのが講義棟
様々な教師養成コースがありますが、たまたま大学4年生のあるクラスの教室の前を通りかかったところ、その授業には学生が4名しかいませんでした。ずいぶん少ないと思い理由を聞いたところ、学年が上がるにつれ、卒業後すぐに有給の正規教師になれる希望が薄いことや、学費・寮費などを工面できないことを理由に、教師になることを諦めて中途退学していく学生がいるとのことでした。今年度は特にそうしたケースが増えているそうで、それはつまり、教師を志す学生数が減っていることを意味します。教師の数が依然として不足しているラオスにおいて、昨今の物価高騰、就職難、そして政府の財政難を背景とした厳しい現実を目の当たりにしました。
以前お伝えしたように、民際センターの支援対象である教師養成校では、2023年秋より2年制コースへの新入生受入れを終了し、4年制コースのみでのカリキュラム継続が決まりました。それに伴い、民際センターでも奨学金の支援期間を2年間から4年間へ変更し、事業を継続しています。学生たちが卒業まで中途退学することなく教師への道を切り開くためには、まだまだ奨学金支援が必要とされています。
奨学生たちが教師を目指す理由
講義棟の一部
講義棟を案内してもらいましたが、どの教室でも皆とても真面目に授業を受けている様子でした。私たちは2年生の教室へおじゃまし、授業の時間を少しだけお借りして奨学生たちにインタビューをさせてもらいました。
普段は寮生活を送っている学生たち。出身村が学校から比較的近いエリアにある学生は、週末に実家に戻ることもできているようでしたが、遠いエリア出身の場合は、長期休みにのみ帰省します。
好きな科目は「自然科学」「国語(ラオ語)」など好みが分かれましたが、難しい科目について尋ねると、「ラオ語教育」と答えた学生が多数でした。少数民族の子どもたちに対しいかに公用語を用いて教えるかを大きな課題としてとらえていることがわかります。
授業を受ける学生たち
教師を志す理由を尋ねてみると、ある学生は「母が教師だが、自分の村には教師が3人しかいない。自分も教師になって村の教育を支えたい」と答えてくれました。他からも同様に、出身村での教師不足を問題視し、その改善のために自分が教師になりたいという意見が多く聞かれました。また、故郷の村の特徴や良い所について尋ねると、皆ふるさとを誇りに思っていることが伝わってきました。
民際センターから学生たちには、「教師養成奨学金をサポートしてくださっている支援者様たちは皆、ラオス国内での教師不足について理解している」こと、そして「ここにいる学生の皆さんが将来教師になり、少数民族の子どもたちを支えてほしいと願っている」ことを伝えました。
その他、日本の文化や観光地などについて質疑応答を終え、教室を後にしました。
どの奨学生も、教師養成コースでの学びを奨学金で支えてもらっていることにたいへん感謝しており、卒業を目指して頑張りたいというメッセージを預かりました。いつも「少数民族教師養成奨学金」をサポートしてくださっている皆様方へ、この場をお借りして、奨学生たちに代わり、心より御礼申し上げます。
(左)奨学生たちとの記念撮影/(右)支援者様への感謝の気持ちを語る奨学生たち
出張の合間を縫っての限られた時間でしたが、学生たちのやる気を感じ、またラオスの教師不足を引き起こしている厳しい状況を肌で感じることのできた貴重な訪問となりました。今後も現地事業所との情報交換を継続し、ご支援中の皆様、そして支援を検討中の皆様との情報共有を行っていきたいと思います。
ラオス少数民族教師養成奨学金について