【タイ洪水奨学金5000キャンペーン】 洪水被災者となったダルニー奨学金支援者の声 -痛みや苦痛は、いつも私たちを強くする-
ダルニー奨学金支援者であり、自身が洪水被害に遭った、ヌッシャリン・サスィピブーン助教授(チャンクラセーム・ラジャパット大学 管理部元副総長)さんの言葉です。
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昨年の大洪水の後、タイ銀行(タイ王国の中央銀行)が発表した報告によると、この水害のための損害額は一兆バーツ以上にものぼるということでした。
そして、被害は広くタイ全土に及び、タイ国の最近50年の歴史の中で、最も被害の大きかった「大水害」となりました。
私自身、他の多くの方々と同様に洪水被災者の一人になってしまいました。
というのも、家がバーケン区のラムイントラー通りにあるので、1か月以上もの間、大通りも細い脇道も60~70センチメートルの水位で浸水してしまっていたからです。車は通ることが出来ず、また、水は腐ってひどい悪臭を放っていました。
当初私は、どうしたらよいのか自分でも全く分かりませんでしたし、いつになったら水は引いていくのか、元の生活に戻ることは可能なのか・・・と、不安な日々を送っていました。
それでも、私は他の被災者の方たちと比べれば、まだ運が良い方だったかもしれません。なぜなら、飲料水や生活水があり、乾燥食品や電気もありましたから。
それに、たとえ、生活が不自由で何事にも以前のようにスムーズにはいかなくなったとしても、私には、座右の銘としている「We have to hurt before we can be strong.(痛みや苦痛は、いつも私たちを強くする。)」という言葉がありました。
私は、この言葉を自分に言い聞かせて、いつも自分自身を励ましてきました。そして、この危機的状況の下、私は、親戚、友人、それに教え子たちを元気づけるために、この言葉を唱え続けました。
さらに言えば、私が教え子たちに「ボランティア精神」や「他人と分け合うことの大切さ」を教える上では、この実体験は、彼らがそれらの言葉をより深く理解するにあたり、とても良い機会になったと考えています。
私は、EDF-Thai(民際センター タイ事務局)からの報告で、タイ東北地方(イサーン)の貧困家庭の奨学生のうち、家族が今回の洪水被害に遭った子どもが大勢いることを知りました。
子どもたちの両親の多くは勤務地が浸水したため、働くことが出来ず、収入が途絶えたとのことです。
そればかりか、バンコクや近郊の工業団地に出稼ぎに来ているたくさんの人がこの洪水で失業せざるを得なくなり、地元に残っている家族に仕送りをすることが出来なくなったとのことでした。
私は、これらの子どもたちは「貧困の連鎖」という不幸に直面していると思います。
なぜなら、彼らは、いろいろな機会に恵まれず、平等な扱いもされず、自分への投資のための資金力もないからです。
また、今回の洪水により、彼らは両親が失業し、勉強を続けるための仕送りが届かなくなったことで、頑張る意欲も無くしつつあります。
今回の洪水で被害をこうむったことで、私は以前のようには彼らを支援していくことはできないかもしれません。
しかし、私はこういった子どもたちを今後も援助し続けるつもりです。それは、支援をすることで彼らを元気づけることができると信じているからです。
併せて、ダルニー奨学金の支援者で、今回の洪水で被害に遭われた方々にも、元気を差し上げたいと思います。
私は、これまで皆様がなさった支援や犠牲的行為は、皆様に強い精神力が宿る成果となって戻ってくると信じています。
奨学金を受け取った児童・生徒にとって、今現在、一番するべきことは一生懸命勉強をすることです。
そして、自分のなすべきこと、つまり学習をすることと、家や家族のために責任もって仕事をすることのどちらも頑張ることをお願いしたいと思います。
今、努力をして何かをすることは、困難に打ち克つ力を身につけ、将来の夢を叶えることができるからです。
もし、私が「元気=頑張る力」を伝えることができるのなら、すべての皆様の心を強い気持ちと元気でいっぱいにしたいと思います。