奨学金を待つ子どもたち ~カンボジア~2
「先生になりたい」
カンボジアの地方で経済的に恵まれない子どもたち、とりわけ学校も勉強も好きだという子どもたちに将来の夢を聞くと、その多くが「先生」と答えます。もちろん、カンボジアにおいても先生以外に多種の職業があります。医者、弁護士、警察官、看護師、歌手、調理師・・・日本のそれらと何ら変わりません。なのに、なぜ彼ら彼女らは「先生になりたい」と答えるのでしょうか。民際センター・カンボジア事務所・所長のチャンディーにその疑問を投げかけました。「身近にいる大人で職業を持っている人が先生しかいないからです」と彼は言います。「家に電気も通っていないので、テレビを見たり、ラジオを聞くこともありません。また、彼らの両親も小学校を出ていないため、読み書きが十分にできず得られる情報は限られます。そのような環境の中で育っている子どもたちは世の中に対する視野が狭いのです。もちろん、教師は立派な仕事だけれども他の選択肢があることもゆくゆくは知ってほしいと思います」と続けました。
今回は前回に引き続き、カンボジアの地方に暮らす小学校6年生、経済的に恵まれないため支援がなければ中学校で勉強を続けることができないを子どもたちの様子をご紹介します。彼らは、みな成績優秀で勉強が大好きです。そして、みんな口をそろえて教師になりたいと言うのです。
*以下にご紹介する子どもたちは、ダルニー奨学金を受け取る予定です。
家の前で
近所の仕事するサレム
サレムの家族は、自分たちの畑を持っていません。両親は、ある日は近所の畑を手伝わせてもらい、また、ある日は日雇い労働者として生計を立てています。でも、その仕事は不安定で仕事をした日の収入は1日30,000リエル(日本円で約810円)です。それは、彼女、弟と妹の家族5人を養うには十分ではありません。サレムは休みの日に、ご近所に御用聞きに行って仕事をもらい、家計を助けます。また、両親の家庭もそれぞれに貧しかったので、サレムの父と母は小学校を卒業していません。両親は、勉強も学校も好きなサレムには学校に通い続けて、将来は彼女の夢である先生になり、自分たちとは違う人生を歩んでほしいと願っています。
ソカー・ドエウムさん(12才)
家の前で
ハス栽培を手伝うソカー
ソカーは7人兄弟の末っ子で、家族はハスを育てて生計を立てています。その収入は週に20,000~30,000リエル(日本円で約540~810円)です。それだけでは、家族7人が生活できません。彼女の兄や姉は小学校を中退して働いています。ソカーも、休みの日にはハス栽培を手伝います。学校での成績はいつも1番で、学校に行くことが大好きです。
ポブ・タイロンさん(15才)
教室の前で
竹かごを作るポブ
ポブの両親は、故郷の村で仕事が見つからなかったため、彼、兄と姉の3人を祖母に預け、タイに出稼ぎに出ています。両親は毎年400,000リエル(日本円で約10,800円)の仕送りをしてくれていましたが、最近は途切れがちです。ポブの兄や姉は経済的に余裕がなくて小学校を卒業していません。ですが、勉強が好きで成績も悪くない彼には中学校へ行ってほしいと兄と姉は口を揃えて言います。ポブは、家計を助け、学費を稼ぐために放課後や休みの日に竹かごを作ります。1日5~6個しかできず、その収入は350~420リエル(日本円で約9~11円)です。
家の前で
叔父の家で勉強をするスレイラ
スレイラの家族には、家も畑もありません。家族は叔父の家に住まわせてもらっています。両親は近所の湖で水草や森で野菜をとって生計を立てていますが、それらが収穫できる日は20,000リエル(日本円で約540円)程度にしかならない上に、全く取れない日もあります。
水を運ぶサヨーン
叔父の家の前で妹と
サヨーンは3人兄弟の真ん中、両親は、畑も家もなく、地元に働く場所がないため出稼ぎに行き、兄弟3人は叔父の家で暮らしています。両親は、毎月子どもたちに200,000リエル(日本円で約5,400円)を送ってくれますが、子どもたちの生活費と学費にはとても足りないので近所の人や叔父に借金を頼むのですが彼らも貧しいので、これ以上の借金のお願いはできません。サヨーンは成績も優秀で学校も好きなので学校に通い続けたいと思っています。
今回紹介した4人は、民際センターが支援するカンボジアの地方における経済的に恵まれない子どもたちほんの一例です。1年14,400円でこのような子どもが中学校に通えるようになります。貧困の連鎖を断ち切るためには、彼らに教育を受けられる環境を整える支援が一番効果的です。どうか、皆様の暖かいご支援をよろしくお願いいたします。
カンボジアの締切は7月20日です。