目次
目的とその背景
世界規模で注目されるごみ問題。 人口増加、都市化、そして経済成長などの要因を背景に、今のままでは2050年までに世界のごみの量は7割増加して34億トンになると予想されています。※1
このごみ問題は民際センターが支援するメコン5ヶ国でも深刻化しており、特にラオスは増えるごみに対して政策が追いついていません。都市であるビエンチャンとルアンパバーンではかろうじてごみ回収があるものの、回収率は40~50%にとどまっているのが現状です。※2 さらにこれらの都市部以外ではごみの回収自体が行われておらず、一般家庭ではごみを埋める・燃やすといったことをしています。ラオスには一部の実験的なものを除いてエネルギー再生施設がなく、ほとんどごみの分別やリサイクルができていません。※3
労働人口の7割以上が農業従事者と言われるラオスでは、食品ごみに加えて農業廃棄物が多いのが特徴です。2011年の調査によると、一般家庭から排出されるごみの量は一人当たり一日691gで、そのうちの64%が生ごみでした。※4 政府はこの再利用されることのない生ごみが環境問題の一因であることを認識しているものの、問題の解決には多くの時間がかかることが予想されています。
そこで民際センターでは、これまでラオスで行ってきた教育支援活動のさらなる一手として、現地の学校で実践的にごみ問題に取り組むことができる「学校内生ごみ処理支援(バイオダイジェスター)プロジェクト」を開始しました。このプロジェクトでは、バイオダイジェスターという発酵を利用した生ごみ処理機をラオスの学校に設置し、生ごみをリサイクルしながら子どもたちに環境問題について学んでもらう試みを始めました。
バイオダイジェスターは、「布とプラスチックでできたテント」の見た目を持ち、そこに生ごみを投入しバクテリアの力で発酵させることで「バイオガスと液体肥料」に転換させる装置です。今まで燃やしたり、埋めていた生ごみが、バイオダイジェスターを通して生活のための燃料と、作物のための肥料に生まれ変わります。自分たちでバイオダイジェスターを管理しながら、ラオスの子どもたちはリサイクルについて考える機会を得ることができます。学校規模で取り組めば、ラオスの環境問題への確実な一歩となります。
2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」。その17ある目標のうち「つくる責任 つかう責任」と記された12番目のゴールは、2030年までに持続可能な消費と生産の確立を目指しています。
私たちが日々大量生産・大量消費を続ければ、やがて地球の限りある資源は底をついてしまいます。今私たちは、つくる側とつかう側の両方の視点から、資源を使いすぎない、無駄にしない、そして繰り返し使っていくための努力を求められています。このSDGsの12番目のゴールでは「世界全体の一人当たりの食料廃棄の半減」「収穫後損失などの食品ロスの減少」「再生利用及び再利用による廃棄物の発生の大幅削減」などが目標として掲げられています。
本プロジェクトは、ラオスの学校にバイオダイジェスターの設置をすることで、リサイクルにつながる生ごみの処理・管理を学ぶことを促進します。自らの手で資源の有効活用をすることで、支援者を含むプロジェクト参加者や子どもたちが環境問題を考えるきっかけを作ります。また、バイオダイジェスターから得られるバイオガスと液体肥料を使い、本プロジェクトに参加したラオスの人々の生活を豊かにすることも狙いとしています。
※1 Global waste generation – statistics & facts, Statista GmbH, 2020
※2 Reducing plastic waste to get “clean and green” in Lao PDR MARCH 22, 2022, The World Bank Group
※4 Data Collection Survey on Waste Management Sector in The Lao People’s Democratic Republic Final Report p.41, JICA
プロジェクトの概要
(1)学校にバイオダイジェスターを設置し、授業の一環として使い方・管理方法を学んでもらいます。バイオダイジェスターを使ったリサイクルを通じて、学校関係者や生徒の環境問題に対する意識を高めます。
(2)ラオス社会においてコミュニティの中心に位置づけられる「学校」。その学校が主体となりバイオダイジェスターでバイオガスと液体肥料を生産し、利用してみせることで近隣農家を巻き込み、農業従事者の環境意識を向上させます。
(3)得られた燃料を調理などに活用し、ラオスの人々の生活を豊かにします。本来であれば女性が木を集め、時間をかけて火をおこしていましたが、燃料(バイオガス)をコンロに供給させることで、スイッチ一つで調理が可能となります。
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実施地域について
支援できる国:ラオス
普及を優先するため、バイオダイジェスターの寄贈先は都市部・農村部を問わず中学校・高校・教師養成大学を対象としています。
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バイオダイジェスターについて
本プロジェクトで使用する生ごみ処理機「バイオダイジェスター」は、生ごみ(日常的に出る食べ残しや料理くず、収穫後傷んだ野菜・果実といった農業廃棄物など)を投入することで、バクテリアの作用でバイオガスと液体肥料を作り出します。電気や水を使わないこの装置は、組み立て・設置・使用方法ともに非常に容易で、ラオスの都市部の学校ではもちろん、インフラ整備が整わない地方農村部の学校でも活用が可能です。丈夫な布とプラスチックでできており、特別なメンテナンスは不要です。
設置環境はバクテリアが働き続けるため年間を通じて気温が高い場所であることが求められるため、ヨーロッパや北アメリカに比べてラオスでの設置は大変適しています。耐用年数は10年程度です。 生ごみの処理を順調に続けることで、1日約2時間の調理に使えるバイオガスと、そのガスの生成過程で生じる液体肥料という2つの再利用が可能になります。
調理用ガスは、生ごみ処理機から最大15メートル離れた場所まで設置が可能な付属のガスコンロで、学校内や学校近辺の施設などで活用することができます。へき地の女性がかまどを使い直火で調理をしている写真をよく見ると思いますが、この火起こし作業は乾いた薪を見つけてきて適度な大きさに割るところから始め、火加減を調整するなど大変な作業が求められます。ガスコンロとガスがあればこの作業はすべて不要となります。また、液体肥料は学校内での使用のほか、近隣の農家等へ販売することで、農作業・庭仕事などへの活用が期待できます。この販売から得られた利益は、子どもたちの教育のために使うことができます。
費用
288,000円/1校
*物価の高騰に伴い価格が変更になっております(2023.10.02より) 。物価の変動や為替変動により、金額が変更となる可能性がございます。
スケジュール
ご寄付者様へお届けするもの
● 進捗をメールでご報告いたします。
● 完成後、バイオダイジェスターを使用する様子を撮影した写真が入った、現地からの報告書をお送りいたします。
● 完成後、バイオダイジェスターやその周辺に支援者様のお名前をお入れします(匿名も可能です)。また、寄贈されたラオスの県や自治体より感謝状をお送りさせていただきます。
● リサイクル実施状況を先生や生徒からのビデオレターを通してお届けいたします。
最後に
今回の学校内生ごみ処理支援(バイオダイジェスター)設置に関するプロジェクトは、ラオス事業所から要望を受けて日本の民際センター事務所で企画いたしました。環境問題へ真向から取り組むこのプロジェクトは民際センターのプロジェクトの中でも特に未来志向です。衛生環境を向上し、さらに身近なものから新しいエネルギーを作りだすことは、今だけでなく将来の子どもたちや遠くに住む私たちの生活にも影響をもたらします。バイオダイジェスターの導入は持続可能なエネルギーへの関心から世界各国で拡大していますが、とりわけ北アメリカやヨーロッパ諸国ではオフ・ザ・グリッドな生き方(電力や水を自給する生き方)を実現する手段として注目されているそうです。今回使用するバイオダイジェスターのモデルはすでにラオスの9つの地域で実践され、確実に広まりつつあります。そして、広まった先で人々の環境への意識を変えつつあります。様々なメリットを生み出すこのバイオダイジェスター。子どもたちによりよい環境を残すために、そしてバイオダイジェスターを身近に置き、触れることで日常の環境問題と向き合う機会をラオスの子どもたちに贈るために、皆様からのご支援をお待ちしております。
是非、皆様のご支援をお願い致します。
本プロジェクトについてのお問合せはお問合せ欄からお気軽にお寄せください。